東京都墨田区にある向島百花園は、江戸時代に造られた歴史ある庭園です。季節の七草やハナショウブ、ハギで形づくられたトンネルなど、四季折々の植物を楽しめるだけでなく、野鳥や昆虫も多く見られる、都心では貴重な自然空間となっています。
今回は、そんな由緒ある庭園で行っている、選択除草での植生管理方法についてご紹介します。
なぜ公園管理で「選択除草」を行う必要があるのか?
園内を一律にきれいに刈りそろえる除草ではなく、なぜ「選択除草」を行う必要があるのでしょうか。
それは、向島百花園が、来園者が楽しく安全に過ごす場所であると同時に、植物が生き、育ち、季節をつないでいく場所でもあるからです。
安全性や景観を保ちながら、植物本来の生育環境も守る。その両立を図るために行っているのが「選択除草」です。
- 安全性を守るため
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園路や橋の周辺では、以下のように、来園者の安全を考慮して草を刈り取る必要があります。
- 来園者の見通しを確保する
- 足元の安全を保つ
- 害虫や倒伏のリスクを防ぐ
ただし、そこに展示植物や希少な植物がある場合は、それらを避けながら慎重に「選択除草」を行います。

来園者の通り道に生えている植物を除去する様子 - 庭園の風景を守るため
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向島百花園は、四季の草花を楽しむ庭園です。
すべてを一律に刈ってしまうと、本来見せたい植物まで失われてしまいます。そのため、- 残す草
- 控えめに整える草
- 完全に除去する草
を見極めながら「選択除草」を行います。

鎌を使って選択除草をする様子 - 植物の生育バランスを守るため
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刈り取りだけではすぐに再生する植物もあります。
そうした場合は、根から抜き取ります。
放置すれば特定の植物が広がりすぎ、他の植物の生育を圧迫する可能性があるためです。
状況に応じて、刈る・残す・抜くを使い分けています。
冬のロゼットのうちに、スコップを使って根から除去する様子
残す植物、除く植物 判断の具体例
- 除く植物の例
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次のような植物は、早い段階で除草の対象とします。
- 繁殖力が非常に強い外来種である セイタカアワダチソウ
- 他の植物に絡みつき、覆い隠してしまう ヤブガラシ などのつる性植物
これらは展示植物ではなく、放置すると他の植物の生育を圧迫し、園内が過度に鬱蒼とした印象になるため、除去します。

生い茂った植物を除去する様子 - 残す植物の例
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庭園の景観を形づくる植物は、全体のバランスを見ながら、残すもしくは、控えめに整えます。
- ミソハギ
- サクラタデ
- ジュズダマ など
これらは展示植物これらは季節感を演出し、向島百花園らしい風景をつくる重要な存在です。

通路にはみ出たホタルブクロ - 時期で判断を変える例
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「展示植物=必ず残す」というわけではありません。
例えばミソハギは、夏に美しい花を咲かせますが、花期を過ぎると枯れ姿が目立つことがあります。そのため、- 花の時期は残す
- 見頃を過ぎたら刈り取る
というように、季節や景観のバランスを見ながら対応を変えています。

夏に綺麗な花を咲かすミソハギ
作業前と作業後で見える違い
作業前は草が繁り、園路の見通しや展示植物が隠れがちです。
作業後は視界が開け、主役の植物が引き立ち、空間全体がすっきりと整った印象に変わります。






まとめ 庭園らしさを守るための選択除草
向島百花園で行っている選択除草は、ただ草を減らすための作業ではなく庭園の景観と植生のバランスを保つための管理です。
残すもの、取り除くものを見極めながら、歴史ある庭園の風景と、そこに息づく自然を守り続けています。
向島百花園フォト








向島百花園では園内1/4ほど広がる池があります。そこでガマやススキ、ハスなどの植物を観察することができます。そんな池にはカルガモもやってきます。4月頃、私たちが作業している最中にカルガモの巣を発見しました。無事に孵り、小さな赤ちゃんカモの様子が見られるようになりました。今では大きく成長し親と見間違えるくらいになり、嬉しい限りです。このように都会の中でも懸命に生きる生き物たちを見ると自然環境を守ることへの意欲がより一層強まります。






