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山菜取り

 3月上旬、雪が溶けたころから山菜採りは始まり、夏頃までその楽しみの対象は入れ
替わっていく。
野生で育つ植物は防御のためか、アク、酸味、苦み、硬さなど何かしら強烈な個性
を持つものが多い。
その個性こそ山菜を食する時の醍醐味である。まさに野生を食で感じながら身体に
取り込むのである。

山菜その1 フキ

 春の山菜取りは3月上旬ごろ、フキノトウから始まる。家を建てたころは、元々その
土地は放置されたクワが生い茂っていたため、明るい場所を好むフキは全く生育して
いなかった。
クワを伐採、伐根し、水を導入し池を造ると、水分を好むフキが一気に増え始めた。
フキノトウは新たに伸びた地下茎から出るが、数年すると籠いっぱいになるほど採れ
るようになった。
フキはその強固な地下茎と光を取り込む広い葉からか、他の草本植物を圧倒する程の
繁殖力がある。

 フキノトウを食べるときは、さっと水洗いし、味噌を付けて生で食べると、その野性
的なほろ苦さが口に広がり、春の訪れを実感させてくれる。
子供のころは刻んだフキノトウと味噌を混ぜ、皿一面に延ばして弱火であぶり、
表面が焦げた位のものをご飯の上に載せてよく食べた。
それがおいしく、御飯が進んだものだ。

 5月下旬ごろになると、今度はフキの葉柄を食べるのが楽しみだ。
周りの繊維を取り、さっと湯がいて軽く油で炒めて食べるのが好きだ。
薄緑色が目にもさわやかで、自然の甘味と苦みが程よく調和し、歯ざわりも良い。
最も好きな山菜の一つである。

山菜その2 コゴミ

 かつて上越の早春を旅したとき、自動車道路の脇に普通に生えていたのは
驚きだった。
雪深い処では、やはりごく身近な植物なのだ。川場では家の辺りでも、生え
ることは生えるが、少々奥の山の沢筋、川沿いに群生する。
家から30分程度登った沢の上流部ではそれこそ見渡す限りの大群落がある。
春先、他の植物が未だ芽吹いていない頃に、無数の丸い緑色のコゴミに埋め
尽くされている光景はまさに圧巻である。
太いコゴミは好まれるのは、歯ごたえもさることながら、ぬめりが多いから
であろう。
さっと湯がくと鮮やかな緑が一層際立つ。
シダ植物特有の多少の苦みと甘味が相まった上品な味だ。

 割合長く保存がきき、時間を経たものは油いための中に入れると、しっかり
とした歯ごたえの故か、独特な存在感がある。

山菜その3  タラの芽

 人気の山菜である。かつて長野の林道を歩いていた時、高さ3m程度のタラの
木の先を大きなカモシカが背伸びして食べているのを見たことがある。
先人たちはこのような光景を見て、自分たちもタラを食べ始めたのではないかと、
その時思った。
このウコギ科の植物は栄養価も豊富だそうで、春先その補給のためにも動物たち
は好んで食べるかもしれない。

 植林した杉林を伐採したところに真っ先に定着するのがタラで、まさに
フロンティア植物だ。
しかし、4~5年で他の樹木が定着し始めるとタラは枯れて消えてしまう。
この木の生育には、山火事や人為的な伐採などの大きな環境変化が必要なのだ。
比較的標高の高い処でもよく見かけるが、この木は他の木のアレロパシーに弱いの
かもしれない。

 食するのはやはり天ぷらが最高である。
その自然な甘みと口の中がいっぱいになるボリュウム感がたまらない。
近年近くで杉の伐採が行われなくなったため、収穫量は減少の一途だ。

収穫したタラの芽
収穫したタラの芽

山菜その4 ミツバアケビ

 ある程度標高の高いところには、ミツバアケビが主に生える。
この地では、ゴヨウアケビとが混在している。
しかし今年、2021年春、昨年まで大きな蔓となっていたミツバアケビは
突如として消えた。
丈が数十センチ程度の実生からのものは林道脇にたくさん生えているが、
大きなものは全く無くなっていた。
これは気象変動による温暖化(私はより深刻な捉え方をしていて“熱帯化”
と呼びたいが)によると思っている。
この温暖化は、あまり気づかないところで植物に大きな影響をもたらしている
に違いない。

 ところでこのミツバアケビは春先伸びた蔓を食する。
太い茎からはより太い蔓が伸びるが、それを折り取り、湯がいて色がさわやか
な薄緑色に変わったら、すぐに水に晒す。
だし汁をかけて食べるが、そのコリコリした歯ごたえと独特な苦みは、他の
山菜には無いものだ。
春になると恋焦がれる山菜だ。残っただし汁は両者の調和した味を引き出し、
これまた最高である。
今後味わえなくなるのではないかと思うと、本当に寂しい。

山菜その4 ワラビ

 小学生のころ、新潟妙高のスキー場でその群落に始めて出会った。
その姿かたちが可愛らしく、夢中になって採った記憶がある。大人になり、
結構普通に生えているため、見つけ出す喜びが感じられなくなり、あまりこの
山菜には興味が無くなった。
しかし長野県須坂市の高原で、レンゲツツジの群落の中に、太くてたくましい
ワラビを見てからまた採るようになった。
特にレンゲツツジとは相性が良いようでその群落があれば必ずワラビもよく生える。
またスキー場など管理された草地では絶好の生育場所となる。
ワラビは初夏まで次々と生えてくるので長い採取時期があるのでありがたい。

 以前はストーブで出た灰をかけ、あく抜きをしたものだが、最近は重曹を振りかけ
熱湯を入れ、一晩おく。
あく抜き後の新しいものはそのままかつお節と醬油をかけて食べるが、そのぬめりが
口中に広がり、ほのかな苦みとともに食が進む。
ある程度日が経ったものは、他の素材と和えて炒めて食べると、これまたおいしい。

スキー場で沢山生えていたワラビ
スキー場で沢山生えていたワラビ

山菜その5 ネマガリタケ

 ネマガリタケについては、長野県黒姫山麓へ、父が幼少の私を連れて行き、そこでの
出来事が鮮明に甦る。
この竹の子が生えている場所は、数メートル先も見えない竹薮で、父はここに居なさい
と指示し、私を置いて竹藪の中に消えてしまった。
私は藪の中に一人取り残され、怖さで泣き叫んだ。
父はその鳴き声を遠くで聞き、急いで探しにこっちの方へやって来た。
私は父を置いてきぼりにしたことを憎んで父を困らせようと思い、泣き叫ぶのをやめた。
“おさむ”どこにいると叫んだが、一向に見つからない。
私はうずくまり、小さくなって簡単に見つからないようにした。
その父の、探し回わる姿を見て、少しはこれで父と対等になれたかなと思った。
父には悪いことをしたと今では思うが、その頃は全くそのような気持ちにはなれ
なかった。

 武尊山麓でワラビをとっていた時、ネマガリタケを袋一杯持った年配が、山から
下ってきた。
彼は私に「細いけど味はいい」と言い残して下って行った。
この山にもこのタケノコが生えることを知って、翌年からこの山菜の王者を探しに、
標高の高い処を歩き回り始めた。
標高1300~1500m程度では、チシマザサは細く、背丈は低い。積雪の多い1600mを
超えるような処では、チシマザサは太くて背丈が3m程にもなる。
そのようなササでないと、太くて質の良いタケノコは育たない。
竹藪を押し分け、かき分けして採るのだが、近くに登山道があるときは注意しなけ
ればならない。
姿が見えない中で竹藪が大きく揺れているので、一度女性の登山者にキャーと叫ばれた
ことがある。
突然ツキノワグマが間近に迫って恐れをなしたのかもしれない。
それからというもの登山者を察知すると、じっと動かないようにしている。
サル達もこのタケノコが好きなようで、ほとんど食いちぎられた後だったことも
何回もある。
採取時期はこの辺りだと6月下旬で、適した期間はほんの一週間も無いのではない
だろうか。

 虫が入っていないことを確かめれば、アクが無いので採ったら直ぐに食べるのが美味い。
自然の豊かな風味とナチュラルな甘みが口の中に広がる。
とにかく鮮度が命で、新鮮さが大切だ。
また、採って直ぐネマガリタケの束を新聞紙で巻いて燃やした後、食べると、甘みがさらに
増し、香ばしさも加わって絶品の山菜となる。
このため、ネマガリタケ採りでは食料を持参しなくても全く問題はない。
山でこの食べ物が補給できるからだ。普通は持ち帰ってそのまま湯がき、皮をむいて塩、
醤油をかけて食べる。
それだけでも食が進み、他のおかずが全く要らなくなる程だ。

茹でて皮むきしたネマガリタケ
茹でて皮むきしたネマガリタケ

山菜その6 ミツバ、セリ、ワサビ

 ミツバは家への林道脇にごく普通に生える。
似たような葉の植物が生えているので最初は見分けが難しいが、慣れるとすぐ分かる
ようになる。
それほど背丈が高い植物ではないので、山の中には生育せず、日当たりの良い、
草丈があまり高くならない林道沿いで群落を造っている。
スーパーなどで売られているミツバと比べると、風味が格段に強く、歯ごたえも
しっかりしている。
多少の苦みも含んでおり、野性味豊かな味だ。

 セリは家の脇の渓流の支流に多少生えていたのだが、パイプで水を導入し水辺を
何ヶ所か造ったところ一気に増えた。
浅い流れが好みのようで、そのような場所は長期間同じ場所に生育し続ける。
新たな水が常に流れる場所は常に新鮮な環境がもたらされていることである。
浅い池ではある年は一面に見られるが、次の年は消えてしまうことが多い。
やはりこの植物は新しい水環境を求めるパイオニアなのであろう。
採りたてをおひたしにして食べるのが好きで、強烈なセリ独特な風味が口いっぱいに広がる。

 野生のワサビは、川場で見たのが最初である。
家の脇の林道を10分程度上った処にある、斜面のきつい杉林がちょうど窪んでいる場所に
点々と生えていた。
水の流れは無かったが、おそらく地表面のすぐ下に地下水が流れていたのだろう。
そんなところに生えていること自体が驚きであった。
貧弱な根茎は保護のため採らずに上部の葉と茎を採る。
水洗いした後、ビニール袋に入れ、軽くもんだ後さっと湯がいて、再びだし汁とともに
ビニール袋に入れ、冷蔵庫に数時間寝かせてから食べる。
苦みが消え、ワサビの辛味とだし汁とが合わさって絶妙の味となり、
酒の肴にピッタリである。

山菜その7 コシアブラ、ウワミズザクラ、サンショウ

 ウコギ科のコシアブラは、天ぷらにすると独特の香りと歯ごたえ、コクのあるうまみが
相まって近年人気が非常に高い山菜だ。
葉の根元を折り取るが、その時の折口の香りが堪らなくいい匂いだ。
スーパー等でも1パック500円以上するのを見たことがある。
近くの雑木林でも何本かあるが、やはり標高1500m以上の雪の多い処に多く見られる。
折れ難い柔軟な幹や枝が、雪深い場所でも耐えて生きていけるのであろう。
普通の中低木は、多量の積雪で枝などが折れ曲がり、生育するのは困難だ。
そのため、背の高い針葉樹が主に生えている場所では、この樹木は楽に見つけられる。

 ウワミズザクラは低地から比較的高い標高の処まで生育するが、この樹木ほど持って
いる生命力、迫力を感じる樹は他に余り無い。
滋養強壮の山菜と知られ、秋に熟した実を果実酒にして飲んだ時、何とも言えない
強い力を戴いたという感覚がある。
このバラ科の樹木の実にどんな栄養価があるのか、私は知らないが、このような実を
付ける樹木そのものに得体のしれない、複雑な光合成生成物を造る能力を有する力が
あるのだろう。
まさに植物の超能力を実感する木だ。
若いつぼみを利用することでも知られている。

 サンショウは5月の連休のころ、その新芽「木の芽」の採り頃となる。
明るい雑木林には結構多く生えており、探し回る必要はない。
枝に、タラより鋭い棘があるが、慎重に枝を掴まないと怪我をする。
何度か血液が滴るような傷を負ったが、木が大きくなると棘はほとんど気にならなくなる。
その新芽は採るのが一苦労だ。
棘のある枝を手繰り寄せ、つまんで採るのだが、相当量採ったつもりでも炒めると水分が
抜け大幅に減る。
根気のいる山菜採りはサンショウがトップだ。
薄味で熱を加えて仕上げたものは、その独特な香りと味で個性が際立つ。
料理に少量添えるだけで、豊かな食を提供する。大好きな山菜の一つだ。

山菜その9 ツクシ、ミズ

 ツクシは子供の頃、近くに当たり前に生えており、若い頃は食する気にもなれなかった。
川場に家を構えるようになって、余りに沢山生えているので一度採って食べてみる
ことにした。
胞子から滲み出るものか、その独特な甘さは他の山菜にはないもので、以後ツクシは大好き
な身近な山菜となった。
ただ、手あたり次第採り、持ち帰って、さあハカマ取りだ。
これが面倒くさくて、採る量を抑えたものだ。
しかし最近は、伸びたツクシをハカマの上部から取るようにし、煩わしいハカマ取りはしな
いで済むようになった。

 ミズはウワバミソウと言い、蛇が出るような湿り気の多い薄暗いような場所に生える。
実際はそのような場所では、蛇はほとんどいなく、どちらかというと明るい湿り気の無い
場所が好みのようだ。
この山菜の採取時期は山菜の中でも遅く、夏ごろが最盛期だ。その頃になると太くなり、
食べ応えも充分だ。
しかし味は今一つで、歯ごたえを楽しむのには良いのだが。ただ、ミズにはとっておきの
楽しみがある。
それは東北地方ではよく食べられているようだが、茎の下部から地下の部分を包丁の背で
たたいてつくるミズトロロである。
強い粘りと多少の苦みと青臭さがたまらなく、独特な山菜だ。
ご飯の上に載せて醤油をかけて食べるとトロロ飯となり、何とも言えない豊潤さを感じる。

家の前のツクシの群落
家の前のツクシの群落

山菜その10 モミジガサ、ハンゴウソウ

 これらは春になると一度は味わってみたい山菜だ。
これらはキク科の植物で結構強烈なキド味を持つ。
しかしその味を味わうことで春の訪れを実感できるのも事実だ。
モミジガサはやや湿り気のある杉林などに群生するが、
葉が開いていない出始めが採取時期だ。
温和なキク科特有の風味はこの植物しか味わえない個性である。

 ハンゴンソウはよりキド味が強烈で、湯がいて一晩水に晒しても、
おそらくかなりの人は2度と食する気にはなれないだろう。
秋には背丈が1m以上になり、美しい黄色い花を咲かせる。

山菜その11 ヤマブドウ、サルナシ、モミジイチゴ

 これらはみな果実酒にするとおいしい。
ヤマブドウは比較的標高の高い開けた場所によく見られる。
しかしその姿を発見しても実の付いていない木が多く、がっかりさ
せられることも多い。
また、沢山の実が見えても、高くて届かないことも多く、採るのに
苦労の多い果実だ。
熟した青紫色の果実は白い粉を付けていて、おそらく天然酵母だろうか。
生で食べるのもおいしいが、果実酒にすると深みのある甘さと酸味の
バランスがすばらしく、ロック、水割りにして飲む。実においしい果実酒だ。

 サルナシは余り高くない蔓は林道沿いによく見かけるが、実をたくさん
つける大きな木はあまり見かけない。
家から直ぐの処にその木があり、毎年沢山の実を付ける。
生で食べるとキュウイに似たさわやかな味が楽しめる。
果実酒にすると美しい薄緑色となり、甘くすがすがしい味となる。

 モミジイチゴは林道沿いなどでよく見かけるが、どちらかというと
美味さでは劣るクマイチゴの方が多い。
6月ごろ橙黄色の美しい実を付けるが、ワラビの時期と重なり採取を
逃すことが多い。生で食べると甘酸っぱくておいしい。
果実酒にすると橙黄色がそのまま残り、見た目も美しく、切れのある
酸味が引き立つ。
以上の3種の果実酒は色、味がみな異なり、飲み比べれば野生の
豊かさとおいしさを実感できる。

ヤマブドウ
ヤマブドウ

         

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